木材保存
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研究論文
酵素・湿式粉砕処理により製造されたセルロースナノファイバーを配合した塗料の性質
石川 敦子片岡 厚大木 博成何 昕伊藤 拓美下川 知子林 徳子眞柄 謙吾小林 正彦神林 徹木口 実
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2019 年 45 巻 2 号 p. 68-76

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抄録
酵素・湿式粉砕処理により製造されたセルロースナノファイバー(CNF)とアクリル樹脂エマルジョンを配合して水系の上塗り用と下塗り用塗料を調製した。上塗り用塗料から作製した塗膜の引張試験からは,弾性率,強度,最大ひずみがCNF の配合率と樹脂への分散時間によって異なることが示された。また,CNF 配合塗料を上塗り又は下塗りに用いてスギ材を塗装したところ,上塗りでは光沢度が低くなり,下塗りでは逆に光沢度が高くなるなど,CNF の配合によって塗装面の光沢度を制御できる可能性が示された。塗装試験片を1000時間の促進耐候性試験に供した結果,CNF 配合塗料を上塗りに用いた試験片では,CNF 未配合の場合よりも表面欠陥が少なかった。また,CNF 配合塗料を下塗りに用いた試験片では,CNF 未配合の場合や下塗り無しの場合よりも表面欠陥及び変色が少なかった。以上の結果から,本研究で調製したCNF 配合塗料を木材の塗装に用いることで,塗膜性能の制御や耐候性の向上が可能であることが示された。
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© 2019 公益社団法人 日本木材保存協会
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