抄録
木材腐朽菌の比較ゲノム解析により,褐色腐朽菌は白色腐朽菌から進化し,その進化は複数回それぞれが独立して起こったことが明らかとなりつつある。褐色腐朽菌は現在少なくともBoletales,Dacrymycetes,Gloeophyllales,Polyporales の4つの分類群のいずれかに属するが,本研究では,多種多様な菌種が分類されているPolyporales に属する褐色腐朽菌の腐朽の特徴を明らかにするため,3種の褐色腐朽菌(オオウズラタケ,ツガサルノコシカケ,マツホド)と1種の白色腐朽菌(カワラタケ)でスギ木片をそれぞれ腐朽させ,X線回折法およびフーリエ変換赤外分光分析法により腐朽材を分析した。その結果,腐朽に伴うセルロースの結晶性や赤外スペクトルの形状が白色腐朽と褐色腐朽では明確に異なることが示された。また,赤外分光法で得られたスペクトルデータを多変量解析した結果,褐色腐朽の中でも幾分異なる分布パターンを示すものが観察された。