木材保存
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研究論文
褐色腐朽菌が木材腐朽過程で放散する揮発性有機化合物の多様性
堀川 翔子近藤 里沙子梅澤 究佐々木 直里小沼 ルミ安藤 恵介吉田 誠
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 46 巻 3 号 p. 137-148

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抄録

我々のグループでは微生物が代謝に伴って放散する揮発性有機化合物(MVOC)に注目し,MVOCの放散パターンを指標とした腐朽診断方法を開発するための基礎的な研究を実施してきた。MVOCを標的とした腐朽診断法が確立されれば,部材の内部や構造的に隠れた部位の腐朽を非破壊的に検出し,腐朽の程度をモニタリングすることが可能になると期待される。そこで本研究では,我が国の代表的な木材害菌である褐色腐朽菌に焦点を当て,異なる褐色腐朽菌が腐朽過程において放散するMVOCを同定し,それぞれの菌における放散パターンを比較することで,褐色腐朽菌におけるMVOC 放散挙動の多様性に関する知見を得ることを目的とした。具体的には,Polyporalesに属するオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)およびマツホド(Wolfiporia cocos),Gloeophyllalesに属するキチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum),Boletalesに属するイドタケ(Coniophora puteana)およびナミダタケ(Serpula lacrymans)の計5種類の褐色腐朽菌を用いて,それぞれの腐朽菌でスギ材を腐朽させた際に放散されるMVOCをガスクロマトグラフィー質量分析計で分析した。同定されたMVOCを菌種間で比較した結果,供試したすべての菌に共通するMVOCとして3-Octanoneが見出されるとともに,それぞれの菌に特異的なMVOCも見出された。

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© 2020 公益社団法人 日本木材保存協会
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