2025 年 51 巻 4 号 p. 138-145
難燃薬剤を注入し,塗装した木材について,120か月間(10年間),屋外暴露試験を行い,屋外暴露が難燃薬剤の溶脱並びに防火性能に及ぼす影響について検討を行った。使用した薬剤はリン酸グアニジンを主成分とする難燃薬剤に溶脱を抑制するためフェノール系の添加剤等を加えて改良したものであった。使用した塗料は,すべて油性の,①含浸・半透明型(茶色系),②半造膜・半透明型(茶色系),③造膜・隠蔽型(白色系),④造膜・透明型(クリア系)の4種類であり,このうち,①と②は下塗りから上塗りまで同じ塗料を2~3回塗り重ねるタイプ,③と④は専用のウッドシーラーを下塗りして素地を安定化させた後に上塗り塗料で仕上げるタイプであった。屋外暴露前の試験体は平均で約251kg/m3の難燃薬剤を保持しており,その防火性能は準不燃材料相当であった。無塗装試験体は5年経過時には難燃材料相当の性能を有するが,10年間の屋外暴露で薬剤残存量が1/10以下に減少し,性能も大きく低下した。塗装試験体は,いずれも5年までは100kg/m3程度以上の薬剤が残存しており,総発熱量は準不燃材料相当であったが,その後も薬剤残存量は減少を続け,10年経過時には塗装④は100kg/m3程度の薬剤残存量があり,準不燃材料相当の性能を示したものの,他の塗装では薬剤残存量が50~70kg/m3に減少し,防火性能も低下した。塗装④においても塗膜が浮き上がるなどの劣化が見られ,メンテナンスの検討が必要な状態であった。