抄録
木質材料の防火性能の向上および火災安全性に資する基礎データを得るため,尿素・ホルムアルデヒド.樹脂の熱分解を研究した。実験室で定法によって硬化した樹脂を,空気およびヘリウム雰囲気中で加熱し,TGカーブおよび等温加熱による重量減少カーブを得た。これらのカーブが速度論的に解析され,見かけのアレニウスパラメータが求められた。急激な重量減少は,これを促進する反応と構造安定化の反応(重量減少を遅らす)とが幾種類か組み合って起きていると考えられる。その全体的な過程は,少なくとも三つ以上の段階が連続して成り立っている。求められたアレニウスパラメータから,各段階の温度依存性が異なるため,それぞれの段階が温度によって優勢になったり,劣勢になったりする。化学的機構を解明するため,今後,異なった手法により研究を進める必要がある。