木材保存
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地域クライメート・インデックス図とその利用
長谷川 益夫飯島 泰男
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1989 年 15 巻 4 号 p. 157-165

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抄録

木造住宅の耐久性にかかわる地域劣化外力を捉えるため,T.C.Schefferが定義したClimate Index(CI)の比較的小さな地域の分布を求めた。地域モデルとして富山県をとりあげた。まず,この地域の気候区Fq2(福井,1933)に含まれる24箇所のAMeDAS観測所のCIを1980~1984年の気象データより算出し,これと観測所が立地する地理地形的因子の関係を重回帰分析した。得られた重回帰推定式を用いて,地域CIメッシュ図を作成した。また,富山県の住宅の木造率は全国的にも高い(76%,1979)という背景において,市郡別に住宅の耐用年数,豪雪時の被災率,対シロアリ施工率を調査し,CIとの関係を調べた。
結果は以下のように要約される。
1) 任意地点のCIは,1km2メッシュから得られる情報である7つの地理地形因子により重回帰推定可能なことがわかった。
2) 富山県におけるCI分布は,家屋が密集した市街部及び山麓部で高くなる傾向を示した。県全体の平均CIは78.0であり,九州中南部に匹敵する。
3) 市郡別のCIと住宅の推定耐用年数の関係を調べてみた結果,市部では有意な相関(r=-0.689,n=9)を示し,傾きは-3.96年/指数であった。北陸56豪雪時の住宅の被災率は,劣化外力因子であるCIよりも直接的な破壊外力である積雪深に大きく影響された。また,CIと対シロアリ施工率との関係では,相関(r=0.522*,n=16)が認められた。

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© 社団法人日本木材保存協会
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