1994 年 20 巻 1 号 p. 10-19
炭素積層木質材料の耐火・難燃性能を把握するために,積層する炭素材料の耐火性能及び積層されたボードの燃焼挙動及び炭化の経緯を明らかにする必要がある。ここでは,グラファイト・フェノール・ホルムアルデヒド樹脂熱硬化性顆粒体(Graphite phenol-formaldehede spheres(GPS))の比重,厚さ,フェノール・ホルムアルデヒド樹脂(PF樹脂)比が異なるGPSボードの火災貫通試験及びGPS積層パーティクルボードやGPSボードを400~1400℃まで焼成した時の炭化挙動並びにJIS A1321に準拠した難燃性試験を行い耐火性能との関係について検討した。
PF樹脂比の異なる厚さ3mmのGPSボードの火炎貫通試験においては,PF樹脂比10~20%ではボード比重0.9以上のボードは2時間以上の耐火炎貫通性能をもち,厚さ3mm以上,比重1.0~1.6のGPS40Aボードに2時間以上の耐火炎貫通性能が認められた。
酸素を遮断した条件下,GPS積層,無積層パーティクルボード,ラワン及びGPSボードを段階的に400~1400℃まで熱処理した時,無積層パーティクルボード及びGPSボードには変形が見られないがGPS積層パーティクルボードはGPS層に比べて炭化収縮の大きなパーティクル層側に湾曲し,そのボードの収縮及び湾曲は焼成炭化温度の上昇に従って大きくなることが判明した。
GPS積層及び無積層パーティクルボード並びにGPSボードのJIS A1321に準拠した難燃性試験において,パーティクルボードは試験開始後間もなく発火,燃焼し,その排気温度及び発煙係数の急上昇を招くが,GPS積層パーティクルボードの発火開始時間は積層法により変化が認められた。発煙係数はパーティクルボードのそれの3~34%を示し,パーティクルボード及びGPS積層パーティクルボードはともに残炎が認められた。またGPSボードには,試験の終了まで発火が認められず,さらに発煙係数及び残炎時間はともに零であった。