抄録
力学測定への供試を目的として,木材ブロックから構成成分を,選択的に,また均一に除去する条件を,厚さ4mmのヒノキ木口試片を用いて検討した。得られた結果は以下の通りである。
1) Klaudiz法に準拠した方法(45℃,~72時間)により,試片内部まで均一に,しかも時間変化で,任意の程度に脱リグニンできる条件が見出された。この場合,ブロックレベルでは反応が拡散律速でないことが反応速度論的にも明らかとなった。
2) 脱ヘミセルロース処理は,NaOH水溶液を用い,高温高圧条件下で行った。この条件では試薬のブロック内部への迅速かつ均一な拡散が容易であり,そのため,ブロック試片の内部まで均一な脱ヘミセルロースが可能であった。また,NaOH水溶液の濃度を変えることで,脱ヘミセルロースの程度を制御することが出来た。
以上の方法は,細胞壁の内外層での不均一性が残るものの,ブロックの内外層での均一性が保障され,力学測定以外にも広く適用が可能である。