2011 年 57 巻 4 号 p. 227-233
事前乾燥をしないで木材の寸法安定化を図る尿素系化合物とグリコール系化合物の加圧注入処理(DS処理)の効果を実証することを目的として,スギ心持ち角材の乾燥試験を実施した。試験の結果,DS処理材の抗収縮能ASEは気乾状態,全乾状態ともに約33%(T方向)であった。この収縮抑制効果によりT方向とR方向の収縮率がほぼ同じになったことで割れが軽減され,正方形の断面形状を維持したまま乾燥した。また気乾状態の試験体の木口断面に呈色液を塗布し薬剤の浸潤度を測定したところ,材端から50mm程度までは完全に浸潤し,それより内側では材の側面から15mm程度の距離まで浸潤が確認された。その浸潤度と収縮抑制効果には高い相関関係があった。以上よりDS処理の実大材に対する一定の寸法安定化効果が確認された。