福祉社会学研究
Online ISSN : 2186-6562
Print ISSN : 1349-3337
┃特集論文┃福祉と教育:メインストリームの「教育」にのることができない人々の教育保障を考える
学力/アチーブメント概念の「弱さ」「受動」への転回
福祉と教育の新たな関係性をひらくために
倉石 一郎
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2022 年 19 巻 p. 33-50

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抄録

近年の福祉と教育との接近,さらに言えば貧困問題の解決策として学力向上

が強調される状況の背後には,戦後日本社会における公私分離のリベラリズム

秩序の不安定化がある.これまで安定して,教育と福祉を排他的に分担してき

た学校,家庭の二大エージェントの足元がいま揺らぎ,両者は支え合いの関係

以上に共倒れの危機に直面している.こうした構図の中で要請されるのは人間

の弱さや受苦性を基盤とした新たな福祉・教育哲学であり,学力/アチーブメ

ント概念もそれに基礎づけられねばならない.

 以上の問題意識から本稿では,教育社会学等における従来までの学力概念の

問題点を明らかにした後,エーリッヒ・フロムおよびジョルジョ・アガンベン

の議論を手がかりに,学力/アチーブメント概念の転回につながる新たな福祉

・教育哲学の糸口を探った.フロムの徳としての力能や生産性,アガンベンの

非の潜勢力の概念はいずれも,受動性を基盤にしつつ,能力の形成や行使が人

間の幸福や倫理性につながることを示すものであった.

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