福祉社会学研究
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最新号
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┃会長講演┃
  • 平岡 公一
    原稿種別: 講演記事
    2022 年 19 巻 p. 5-23
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/06/06
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本における福祉社会学研究の動向に関して,筆者の視点と問題意

    識に即して,若干の分析と考察を行い,今後の研究の展開を展望することをね

    らいとしている.前半部分では,1990 年代までに形成された研究潮流である

    ①福武直の社会政策論,②社会計画論・社会指標論,③福祉国家論・比較社会

    政策研究,④副田義也の福祉社会学を取り上げ,それぞれについて,近年の政

    策動向と研究動向に即して,分析と考察を行った.まず①については,戦後日

    本の主流の社会学者,特に富永健一の社会政策論への筆者の問題関心を述べた.

    ②に関しては,参加指向と業績管理指向の双方の方向性を有する近年の政策展

    開のなかでの社会福祉計画の性格変化について論じた.③に関しては,2000

    年前後からの特徴的な研究の内容を紹介した.④については,学会創設以降,

    副田の築き上げた基盤の上に連字符社会学としての福祉社会学が成立したこと

    などを論じた.後半部分では,まず第18 号までの学会誌の自由論文のテーマ

    別の分類結果を紹介し,大人・子どものケア関係の論文が過半数を占めるなど

    の特徴的な傾向に注目した.さらに,学会賞受賞作品を紹介し,非営利セクタ

    ー/サードセクターと障害者運動に関連する作品がそれぞれ2 点あることを指

    摘した.最後に,今後の展望として,学際的研究交流のさらなる拡大の見通し

    と,国際的研究交流のさらなる拡大への期待について論じた.

┃特集論文┃福祉と教育:メインストリームの「教育」にのることができない人々の教育保障を考える
  • 阿部 彩
    原稿種別: その他
    2022 年 19 巻 p. 27-31
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/06/06
    ジャーナル フリー
  • 福祉と教育の新たな関係性をひらくために
    倉石 一郎
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 19 巻 p. 33-50
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/06/06
    ジャーナル フリー

    近年の福祉と教育との接近,さらに言えば貧困問題の解決策として学力向上

    が強調される状況の背後には,戦後日本社会における公私分離のリベラリズム

    秩序の不安定化がある.これまで安定して,教育と福祉を排他的に分担してき

    た学校,家庭の二大エージェントの足元がいま揺らぎ,両者は支え合いの関係

    以上に共倒れの危機に直面している.こうした構図の中で要請されるのは人間

    の弱さや受苦性を基盤とした新たな福祉・教育哲学であり,学力/アチーブメ

    ント概念もそれに基礎づけられねばならない.

     以上の問題意識から本稿では,教育社会学等における従来までの学力概念の

    問題点を明らかにした後,エーリッヒ・フロムおよびジョルジョ・アガンベン

    の議論を手がかりに,学力/アチーブメント概念の転回につながる新たな福祉

    ・教育哲学の糸口を探った.フロムの徳としての力能や生産性,アガンベンの

    非の潜勢力の概念はいずれも,受動性を基盤にしつつ,能力の形成や行使が人

    間の幸福や倫理性につながることを示すものであった.

  • ケイパビリティ・生きづらさの仕分け・フリースクール
    森田 次朗
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 19 巻 p. 51-70
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/06/06
    ジャーナル フリー

    2010 年代以降,社会学の領域では,子どもの福祉の観点から不登校児童生

    徒の学習機会をいかに保障するかが喫緊の課題である.だが,先行研究の知見

    では,就学援助や学習支援等の学校制度内の施策に焦点が当たる一方で,その

    外部の学びの多様性が看過されてきた.とくに教育機会確保法(通称)の成立

    以降,不登校児童生徒への管理が高まりつつあると言われるなか,学校外の学

    び場が,日常的な活動場面でいかなる困難に直面しているかが看過されている.

     そこで本稿は,ケイパビリティ・アプローチ(CA)の視点から,1)教育機

    会確保法の成立以降,日本の義務教育段階で不登校児童生徒への支援がいかに

    展開されつつあるか,及び,2)こうした政策動向のもと,学校外の居場所を

    掲げるフリースクールの活動がいかなる葛藤に直面しつつあるかについて考察

    した.

     結果,同法の成立以降,学校制度の内外で,不十分だが,経済的支援や休養

    の必要性も含めた多様な学習機会の拡充(財・サービスの配分)が検討され始

    めていること,他方で,フリースクールの現場は,従来の多目的な「居場所」

    という意味づけに代わり,特定の目的を有する「支援施設」としてのまなざし

    を受け始めており,子どもの日常をめぐり,「生きづらさの仕分け」と呼びう

    る機制が生じつつあることが明らかになった.以上の議論から,今後,子ども

    にとって,「何もしないこと」も含めた実質的自由が保障される制度設計が重

    要になる.

  • 中山 忠政
    2022 年 19 巻 p. 71-88
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/06/06
    ジャーナル フリー

     わが国においては,近年になって,「分離率」の急速かつ一貫した上昇がみ

    られる.わが国においては,障害のある子どもと障害のない子どもとの間には,

    「学びの場」の分離と分断が進んでいるということになる.本稿においては,

    その背景を,インクルーシブ教育を受けることが,「権利」として理解されて

    いないことにあるのではないかと考え,締約国に対してインクルーシブ教育シ

    ステムの確保を求める,障害者権利条約第24 条(教育)の条文と,2012 年の

    中央教育審議会の報告の記述内容との乖離について,検討した.報告(2012)

    においては,インクルーシブ教育システムが,障害のある人の「権利」である

    という説明はなされておらず,報告(2012)は,そのような起点に立つもの

    ではなかった.また,報告(2012)は,インクルーシブ教育システムを,目

    指すべき「理念」とし,今後,「構築」されていくものとし,その「後送り」

    をしているようでもあった.障害のない自身が「当たり前のもの」として享受

    している「権利」というものの意味するものと相向かい,障害のある人と共に

    学び,共に生活するインクルーシブ社会のあり方について考えていくことの必

    要性を述べた.

┃書 評┃
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