本稿は,日本における福祉社会学研究の動向に関して,筆者の視点と問題意
識に即して,若干の分析と考察を行い,今後の研究の展開を展望することをね
らいとしている.前半部分では,1990 年代までに形成された研究潮流である
①福武直の社会政策論,②社会計画論・社会指標論,③福祉国家論・比較社会
政策研究,④副田義也の福祉社会学を取り上げ,それぞれについて,近年の政
策動向と研究動向に即して,分析と考察を行った.まず①については,戦後日
本の主流の社会学者,特に富永健一の社会政策論への筆者の問題関心を述べた.
②に関しては,参加指向と業績管理指向の双方の方向性を有する近年の政策展
開のなかでの社会福祉計画の性格変化について論じた.③に関しては,2000
年前後からの特徴的な研究の内容を紹介した.④については,学会創設以降,
副田の築き上げた基盤の上に連字符社会学としての福祉社会学が成立したこと
などを論じた.後半部分では,まず第18 号までの学会誌の自由論文のテーマ
別の分類結果を紹介し,大人・子どものケア関係の論文が過半数を占めるなど
の特徴的な傾向に注目した.さらに,学会賞受賞作品を紹介し,非営利セクタ
ー/サードセクターと障害者運動に関連する作品がそれぞれ2 点あることを指
摘した.最後に,今後の展望として,学際的研究交流のさらなる拡大の見通し
と,国際的研究交流のさらなる拡大への期待について論じた.