福祉社会学研究
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Print ISSN : 1349-3337
┃特集論文┃福祉と教育:メインストリームの「教育」にのることができない人々の教育保障を考える
なぜ,教育におけるインクルージョンは,進まないのか?
中山 忠政
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2022 年 19 巻 p. 71-88

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抄録

 わが国においては,近年になって,「分離率」の急速かつ一貫した上昇がみ

られる.わが国においては,障害のある子どもと障害のない子どもとの間には,

「学びの場」の分離と分断が進んでいるということになる.本稿においては,

その背景を,インクルーシブ教育を受けることが,「権利」として理解されて

いないことにあるのではないかと考え,締約国に対してインクルーシブ教育シ

ステムの確保を求める,障害者権利条約第24 条(教育)の条文と,2012 年の

中央教育審議会の報告の記述内容との乖離について,検討した.報告(2012)

においては,インクルーシブ教育システムが,障害のある人の「権利」である

という説明はなされておらず,報告(2012)は,そのような起点に立つもの

ではなかった.また,報告(2012)は,インクルーシブ教育システムを,目

指すべき「理念」とし,今後,「構築」されていくものとし,その「後送り」

をしているようでもあった.障害のない自身が「当たり前のもの」として享受

している「権利」というものの意味するものと相向かい,障害のある人と共に

学び,共に生活するインクルーシブ社会のあり方について考えていくことの必

要性を述べた.

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