抄録
1999年から2004年に南西諸島から東日本の太平洋岸にかけての北西太平洋で実施した船舶調査に基づき,アホウドリの海上分布のパターンと出現場所の地理的特徴を検討した。目視調査では15群325羽,その他の活動中の随時観察では25群45羽のアホウドリが発見された。目視調査の結果は,アホウドリが10–12月期から翌年の4–6月期にかけて日本近海に出現し,尖閣諸島南小島沖,伊豆諸島鳥島の周辺,および鹿島灘から常磐三陸沖に至る東日本の太平洋岸沖の三つが主な分布域であることを示した。出現場所の解析によれば,営巣地周辺では島の30 km以内に多くの個体が集中し,東日本の太平洋岸沖では,親潮・黒潮混合域の距岸距離20–70 km, 水深200–1400 mの陸棚縁辺部から大陸斜面にかけての海域を利用していた。本研究の結果は,営巣地近くの休息場所と東日本の太平洋岸沖合陸棚斜面域の索餌域がアホウドリの繁殖期における海上生息域として重要であることを示唆している。