山階鳥類学雑誌
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短報
クロツグミTurdus cardis における雛への給餌前後の小声のさえずり
石塚 徹
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2009 年 41 巻 1 号 p. 34-41

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抄録

巣の周辺における小声のさえずりは多くの鳴禽類で知られている(巣における雌雄の交代の際のさえずりなど)。しかし,そのさえずりやその機能についての研究は記述的な傾向にあり,定量的な分析は非常に少なかった。クロツグミTurdus cardis の雄は雛への給餌の直前直後に少数回,小声のホィッスルでさえずる。本研究では4巣について,訪巣,離巣,小声のさえずりといった雄の行動を,雌の存在や行動と関連づけて調べた。雄は訪巣直前の59.5%の機会において,また離巣直後の44.6%の機会においてさえずった。ほとんどの雄で,訪巣直前のさえずりの頻度と,雌の在巣との関係はみられなかった。しかし,雄が訪巣直前にさえずった場合,雌は雄の到着前に離巣する傾向があった。このことは,さえずりが巣における交代の合図として使われていることを示唆する。雌が巣にいないときほど,雄は離巣直後にさえずる傾向があった。但し,そのさえずりは雌の次回の訪巣のタイミングに影響しなかった。巣立ち直前の観察では,雛の活発さと雄のさえずり行動の頻度は同調していた。ツグミ類は家族内のさえずりを研究する好適な対象かもしれない。

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© 2009 公益財団法人 山階鳥類研究所
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