北海道南部の室蘭市では1984年の初確認後,1993年からカササギPica picaが定常的に観察されるようになった。本論文では地元の野鳥観察者による観察記録をとりまとめて,10年毎に分布の変遷を検討した。カササギは第1期(1984~1993年)には最初に確認された場所の周辺地域に留まり,そこで繁殖を始めた(原地域)。第2期(1994~2003年)には,原地域から平野伝いに東側へ広がった。その後には調査範囲を越えてさらに東へ拡大していったが,調査地域内では大きな変化はなかった。第3期(2004~2013年)には,丘陵地を越えて西側へ分布が拡大した。
カササギの分布は低地の平野に限定されており,起伏のある地形を越えて西側へ分布が拡大するまでに時間がかかったと思われる。繁殖率は高くはないが定着性が強いので,第3期には最大で10羽の群が観察され,密度が高まっていったと思われる。この間,密度増加の過程において,西側へも分布が拡大した可能性がある。