2015 年 47 巻 1 号 p. 1-16
齢既知のハシボソミズナギドリPuffinus tenuirostris 14個体の下顎骨を用い,雛から成鳥まで,成長とともに変化する骨の組織形態を調べ,年齢との関係について考察を行った。「脱灰標本法」により組織標本を作製し,デラフィールドのヘマトキシリンで染色したのち,鏡検した。その結果,成長に伴う組織形態の形成過程が明らかになり,1ヶ月齢から6ヶ月齢までの雛と幼鳥の月齢の識別ならびに亜成鳥と成鳥の判別が可能であることが見出された。齢とともに発達する年輪的な層状構造は1歳以上の3個体すべてにおいて観察されたが,年齢とは一致しなかった。ハシボソミズナギドリの下顎骨における層状構造の形成は,初め外基礎層板において広い範囲に見られるが,年齢を経るとともに,形成と同時に骨内部からハバース系の発達による侵食を受け,実際の年齢よりも本数が少なくなると考えられた。