山階鳥類研究所研究報告
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シジュウカラの社会組織に関する生態学的研究
II.基本群の形成
斉藤 隆史
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1979 年 11 巻 3 号 p. 137-148

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抄録

1.本論文は基本群の形成,特に若鳥の分散から特定の地域への定着までの動向について記述し,基本群の構成員の結び付きに関する要因を論じたものである。調査は1970年の夏期および秋期に赤坂御用地において行った。
2.基本群の形成は若鳥の夏期および秋期行動圏の選定,若鳥と成鳥の最終的な結び付きという三つの過程を経て行われる。若鳥は家族群の崩壊後,若鳥だけの夏期群を形成し,親鳥からの独立後,約一ヶ月以内に夏期行動圏を選定する。
3.夏期群を形成しながら,若鳥は次第にその活動を夏期行動圏内の特定の場所に集中しはじめ,同一地域で観察される若鳥の構成が一定になってくる。大部分の若鳥は10月中旬頃までに秋期行動圏を選定するが,夏期および秋期行動圏は家族群の行動圏内に選定されると考えられる。
4.成鳥は繁殖後も元のテリトリーを中心とした地域に留まっていて,その後に若鳥が成鳥の留まっている地域を秋期行動圏として選定する。その結果,成鳥の行動圏と若鳥の秋期行動圏が重複することになり,これらの個体によって基本群が形成される。
5.したがって,基本群は行動圏が重複する個体から形成され,構成員間の結び付きは主に行動圏の重複によっていると考えられる。

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