抄録
イワヒバリとカヤクグリの生態的分離について,両種の生息場所,採食地,ソング•ポストの調査を行い比較検討した。調査は1977年4月から1980年10月までの間に,中央アルプス木曾駒ケ岳の高山帯で行った。得られた主な結果はつぎのとおりである。
1.イワヒバリの生息場所は砂礫地が30.3%,岩礫帯が25.6%と裸地が多かったのに対して,カヤクグリの生息場所は高山低木林が多く58.3%であった。
2.高山低木林ではイワヒバリは幹や林床などの下層部で,カヤクグリは主として枝や葉などの上層部で観察され,林内で階層別に分離していた。
3.イワヒバリの採食地は砂礫地が46.2%,高山草本帯が25.2%,カヤクグリの採食地は高山低木林が57.3%と両種の間で相違がみられた。
4.両種ともに調査地に残雪がある期間は雪面に飛来した昆虫を採食していた。
5.イワヒバリのソング•ポストは岩礫帯が68.2%ともっとも多く,カヤクグリのソング•ポストは高山低木林が87.4%と圧倒的に多かった。