山階鳥類研究所研究報告
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ハシブトガラスの朝起と夜起
黒田 長久
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1984 年 16 巻 2-3 号 p. 93-113

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抄録

1972~79年の8年間に1番のハシブトガラスのなわばりにおいて集団塒からの朝帰り記録454件と夜帰り95件について,日出時間,月別,季別,天候別の統計分析を行った。
朝の帰来は日出前0~65分の変化があり,夜が短い(昼の採食時間の長い)春は平均24~27分前,夏は平均21分前と遅く,夜の長い(昼の採食時間の短い)秋,冬は30分前と早くなる。天候効果は,晴で帰来が平均29.8分前と早く,曇25.3分前,雨20分前と遅くなる。しかし,春は(とくに4月)曇と晴との差が乱れ,変異幅も大きい。しかし,雨では常に遅く,変異幅も小さい。これは,春は繁殖活動で晴曇効果が打消されるが,雨は常に鳥の活動を抑制することを示唆する。ハシブトガラスの朝起は常に他の鳥より数分早い。
夜の帰来は一旦塒に飛去してから,20時以降,4時までの間に記録され,ピークは23~24時台16%,1~3時台が73%であった。夜の帰来は7月(1回)からはじまり,9月5回,10月11回,11月21回(22%)と最も多くなり,3,4月の各7回で終り,5月以降はなかった。また晴の日が多く,雨では最も少なかった。夜の帰来は不定期であり,繁殖準備から初期のなわばり不安定期における心理的浮動を反映する現象と思われ,都市に限られるのか否か将来解決を要する。

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