山階鳥類研究所研究報告
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タスマニアにおけるハシボソミズナギドリ Puffinus tenuirostris の雛の成長と発育
岡 奈理子
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1989 年 21 巻 2 号 p. 193-207

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抄録

1.1988年1月中旬から4月末日までオーストラリア•タスマニア州南東部南緯43度のClifton Bluffコロニーでハシボソミズナギドリ雛の外部成長を孵化から巣立ちまで調査した。巣立ち成功率は全体で35%となり,雛の死亡の73%が密猟と野猫の捕食によるものであり,この捕食は育雛中期から後期にかけて集中した。
2.雛の孵化は1月10-25日にみられ,特に16-21日に集中した。巣立ちに先立ち雛は4月半ばから,平均9日間夜間巣穴の出入りを繰り返した。巣立ちは4月15日,91日齢に始まり4月23-29日に集中し,平均巣立ち日齢は97日であった。
3.孵化時の平均体重,ふ蹠骨長,嘴峰長はそれぞれ親鳥の10%,40%,50%であった。ふ蹠骨長の成長率は孵化直後に,また嘴峰長の成長率は1週間齢でそれぞれ最大値を示し,育雛中期には親鳥サイズとなった。平均体重は育雛中期に親鳥の平均体重に達し,70日齢から80日齢に顕著な増減を示した。60日齢から83日齢までの体重ピーク時には親鳥のほぼ15%増を示した。その後体重は減少を続け,ピーク時の25%減,親鳥比13%減で巣立った。一方,風切羽,尾羽はそれぞれ34,45日齢で伸長を始め,骨部位とは対照的にその成長は育雛後半期に集中し,成長率は翼長,尾長ともに60日齢で最大値を示した。しかし,翼長,尾羽は巣立ち時には親鳥サイズには到達せず,巣立ち後も伸長することが示唆された。
4.巣立ちに平均97日を要する亜遅成性本種雛の成長様式の適応性を,体部位の成長期のずれに焦点をあてて論議し,あわせて体重成長の年次変化からその後の生残の可能性について論議した。

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