山階鳥類研究所研究報告
Online ISSN : 1883-3659
Print ISSN : 0044-0183
ISSN-L : 0044-0183
外部形態測定値によるヒヨドリの雌雄判別
中村 和雄佐藤 文男杉森 文夫今村 知子
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 21 巻 2 号 p. 253-264

詳細
抄録

ヒヨドリの雌雄を判別する方法を確立するために,外部形態部位の計測値を基に,判別分析を行った。分析には,神奈川県三浦半島および東京周辺で捕獲されたもので,捕獲直後に計測したもの(標本A,C),関東~関西の各地で採集された後,冷凍保存されていたもの(標本B),北海道~九州の各地で採集され,山階鳥研標本室に保存されていたもの(標本D)を用いた。
1.標本A~Cでは,測定した10部位の大きさと体重の平均値は,ほとんどの場合で,雄の方が雌よりも有意に大きく,体のサイズにおける明瞭な性的二型を示した。
2.各計測値の標本ごとの平均値と分散を標本間で比較した結果,捕獲後冷凍保存されていた標本Bの一部の部位を除くと,標本A~Cは同じ母集団からの抽出標本と考えられた。それに対して,乾燥標本(標本D)はこれらとは異なった母集団からのものと結論された。
3.同一シーズンに同一場所から捕獲された標本Aについて,判別分析を行った結果,翼長のみを用いた場合には,誤判別率は0.08であったが,変数の数を増やしていくと,誤判別率は低下した。しかし,〓蹠長,鼻孔前端長,全長,翼開長,全頭長,嘴幅の6変数を用いたときは,測定した全変数(11変数)を用いた場合とほぼ同程度の判別効率(誤判別率0.021)を示した。
4.より一般的な判別関数を得るために,各地で得られた標本も加えて判別分析を行った結果,尾長,〓蹠長,鼻孔前端長,翼開長,全頭長の5変数を用いることで,誤判別率0.043の判別関数が得られた。また,この代替として,自然翼長,尾長,〓蹠長,嘴峰長,全頭長の5変数を用いた場合には,誤判別率は0.055であった。したがって,これらの関数を用いて,野外で捕獲したヒヨドリの雌雄を判別できる。
5.標本A~Cで得られた判別関数を乾燥標本(標本D)に適用したところ,誤判別率は0.26であった。このため,乾燥標本の雌雄判別は,別途検討する必要がある。

著者関連情報
© 財団法人 山階鳥類研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top