山階鳥類研究所研究報告
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エトピリカ(Lunda cirrhata)の形態的特性と雌雄差
塩見 浩二小城 春雄
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1991 年 23 巻 2 号 p. 85-106

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抄録

ウミスズメ科海鳥類の一種であるエトピリカの形態的特性と雌雄差を明かにする目的で,アメリカ合衆国,アラスカ州,アリューシャン列島周辺海域で1987年6月~7月に採集したエトピリカの繁殖成鳥,雄10個体,雌14個体を用い,外部形態15箇所,骨格34箇所,前肢筋36部位,後肢筋31部位を計測し,以下の結果を得た。
(1)外部形態では,胃内容物を除いた体重,片翼開長,最大翼長,翼幅および〓蹠長において雄が雌より有意に大きかった。
(2)骨格では,16箇所で雄が雌より有意に大きかったが,プロポーションでは有意な雌雄差は認められなかった。
(3)体重に対する前肢筋および後肢筋の総湿重量の割合を調べた結果,後肢筋において雄が雌より有意大きかった。
(4)乾重量では,後肢筋において,顕著な雌雄差が認あられ,雄が雌より大きかった。また,後肢筋に対する相対値は,前肢筋において雌が大きい傾向が認められた。
(5)総後肢筋乾重量に対する機能的グループの雌雄差を比較した結果,前肢筋では,上腕骨を上げる筋肉,上腕骨を下げる筋肉および上腕骨を後方に引く筋肉において,雌が雄より有意に大きかった。後肢筋では,脛骨を広げる筋肉において,雌が,脛骨を曲げる筋肉において,雄がそれぞれ有意に大きかった。
(6)近縁種のウミガラス類と比較した結果,エトピリカは潜水能力においてウミガラス類より劣ることが示唆された。
(7)本研究からエトピリカは飛翔能力および潜水能力に雌雄差があることが示唆された。

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