抄録
練習調査船若竹丸のベーリング海におけるサケマス流し網調査期間中の1989年7月12日に,58°30'N,179°30'Eでアホウドリの幼鳥が船の周囲で約2時間観察された。このアホウドリの外観は,薄桃色がかった大きなくちばしと脚部の他は全て黒褐色であった。また,翼の上部ばかりでなく下部も黒褐色であった。このような幼鳥は繁殖地である鳥島には出現しない(Hasegawa and DeGange 1982),そして山階鳥類研究所に保存されている4才鳥の剥製標本から判断して,今回観察されたアホウドリ幼鳥個体の年齢は1~3才であると考えられた。
その他のアホウドリの観察例では,幼鳥あるいは亜成鳥が1979年7月21日,57°30'N,177°00'Wで1羽,そして成鳥ないし亜成鳥が1985年8月30日,55°30'N,175°01'Eで1羽出現した。
これらの観察例から,ベーリング海におけるアホウドリ幼鳥および亜成鳥の夏季の分布域は,沿岸域ばかりでなく外洋域にもおよんでいる可能性がある。