山階鳥類研究所研究報告
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ヤマガラの繁殖経過と育雛期の食習性
元 柄〓金 相旭金 鐘賢
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1965 年 4 巻 3-4 号 p. 198-207

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抄録

1.本調査は1963-1964年に亘り韓国京畿道光陵試験林に架設した人工巣箱を利用して繁殖しヤマガラ(Parus varius varius)35個の巣箱(1963年19個,1964年16個)に対する繁殖経過と育雛期の食習性を調査したものである。
2.ヤマガラは韓国全域にて樹木の自然洞穴又は人工巣箱を利用繁殖する留鳥で優占的森林鳥類の1種である。夏季は濶葉樹林と混淆林に棲むが冬季には平地の疎林にも漂行する。
3.営巣は雌雄共同で行い,4~7日かかる。営巣材料は蘇苔類が主でカエデ,サクラ,カラマツ等の葉,ネズミサシの樹皮及び草本植物等が用いられ,産座にはキバノロ,チョウセンアナグマ,コウライタヌキ等の毛,鳥の羽毛及びヒカゲスゲ類の葉及び細根等が混合使用され稠密に作られる。
4.営巣が終った当日又は3~4日後から産卵を始め,産卵期は4月初旬から6月初旬である。卵数は4~10個,7~8個が普通で1日1卵を産む。
5.抱卵も雌雄交互に行い抱卵期間は12~14日であり,5~6月に大抵孵化する。
6.育雛は5月中旬から7月初旬までに行い約12~17日を要する。
7.食餌物は昆虫の幼虫其の他動物質が主で生育するに従い昆虫の成虫の量が増加し,少量の植物質も与える。孵化後初期には軟い無毛幼虫と蜘蛛類の給与量が多いが,雛が生長するに従い毛虫の量が増す。
食餌物は昆虫の幼虫54.69%,成虫13.85%,蛹1.5%,其の他動物質29.59%,そして植物質0.37%の比率であった。昆虫の幼虫ではNoctuidae,Geometridae,Cerruidae,Lymantridae等の蛾類が大部分であり,成虫ではXiphidion属が優位であった。
其の他動物質ではAraneinaが26.97%を占め,雛が生長するに従い蜘蛛類の量は減少し昆虫類の量が増加した。
森林保護上から見たとき全食餌物の45.32%が害虫で,蜘蛛類が27.71%,其の他動物質が26.97%に該当した。従って本種の森林害虫防除の功は大きく,巣箱架設に依る保護増殖が要望される。
8.巣箱は板製でよく,出入口の径は3cmで充分であり巣箱の高さは韓国では少し高めて6m位がよかろう。

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