山階鳥類研究所研究報告
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新亜種リシリコマドリについて
黒田 長久
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1965 年 4 巻 3-4 号 p. 221-223

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抄録

筆者は1965年6月,コマドリの調査を主目的として利尻島に2泊した。礼文島は船便と日程の関係で泊れなかった。両島は全島保護区であるので,北海道庁生物保護指導監斎藤春雄氏のお計らいと現地の方々の御好意により,島での飼育鳥から2羽の標本を得ることができた(1羽は偶然前日死亡のもの),また多くの籠鳥をみた。これらは何れも同一型の羽色(多少顔の濃淡はあるが)であった。この標本を山階鳥研の本州産標本及び飼育生鳥とも比較して,次のような点で明らかに区別できたので,和名リシリコマドリ,学名Erithacus akahige rishiriensisを与えることにした。
1.頭頂から上面,翼にかけ一様にオリーブ(緑色味)を帯び,本州産より赤味が弱い(オリーブ味は古い標本で多少失われるかもしれないが)。
2.従って上面の色は本州産より顔部の橙赤色とはっきり境され,額から顔部も本州産ほど濃赤色でなく,とくに上胸に至り明るい橙色となる。
3.この上胸の橙色は以下の青黒色とはっきり境し,この色も濃く鮮かである。
4.尾も本州産より多少薄く,脇も淡くオリーブを帯ぶ。
5.測定では差はない。
なお,1932年12月の利尻標本は上面はより赤味があるが,本州産に比すれば少しオリーブを帯び淡い(季節的な変化や古い標本でオリーブ色が失われる傾向があるかもしれないが)。また一般に胸の青黒色の羽は羽縁が淡灰色で,春はこれがすれて一様な青黒色となるらしい。しかし本州産標本からみて,個体(または年令)により羽毛全体に青黒色の少ないものもある。全般として,利尻のコマドリは羽色の対照が鮮かで,全体に赤色味の強い本州のコマドリよりも美しく,声も高く美しいように思った。なお,北海道の個体について今後調査する必要がある。
ここに,斎藤春雄氏をはじめ,御協力を得た東利尻町長小松為五郎氏,同主事山田重男氏,利尻町長小田桐清実氏,同建設課安田美樹穂氏,沓形愛鳥保護会の兼田広氏,田尻忠司氏ほかに感謝の意を表し,併せて,礼文島で飼育コマドリを拝見し得た礼文町長向瀬貫三郎氏にも同様御礼申し上げる。
リシリコマドリの生態,羽色,渡りについては,さらに将来調査したいと思っており,重ねて御援助を乞う次第である。

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