山階鳥類研究所研究報告
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モグリウミツバメとウミスズメの平行進化の形態,解剖学的分析
ミズナギドリ目,ウミスズメ目の比較骨学
黒田 長久
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1967 年 5 巻 2 号 p. 111-137

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抄録

モグリウミツバメ(Pelecanoides)は翼の長い飛翔型のミズナギドリ目のなかで,外形上は小型ウミスズメに極めて似た翼の小さい潜水型に進化した。ウミスズメ(Synthliboramphus)と外部形態,翼型,翼面積など比較すると一般的類似のなかで,やはり飛翔型由来を反映する測定比例がみられる。一方翼で潜水する適応として初列部の自由な回転(プロペラ効果)など平行的適応がある。剥皮した体型では一次的潜水適応型としてのウミスズメと飛翔型由来の二次的潜水適応型のモグリウミツバメの間に一般体格とその各部(a…zのアルファベット測定)の測定比例の差がみられ,とくに胸郭が太く胸部の短かい点はそれが著しく長いウミスズメと非常に異なる違いである(これは両者の採食法への適応を反映する-後述)。骨学的にもモグリウミツバメは腰骨,肋骨,胸骨などにミズナギドリ目中のウミツバメ科や小形ミズナギドリ科の特徴を保有し,一方潜水適応としての翼骨や脚骨の長さの比例はウミスズメと極めて類似している。ただしモグリウミツバメの腰骨はミズナギドリのなかの潜水性のものほど特化(細長く)していない。また,鎖骨の著しい発達(その形はややウミツバメに近い)は独特の特徴で,これは潜水に必要な胸筋量を前方に増大(後方は腹を圧迫しないように短かい)する効果(適応)があり,飛翔能力も低下させないという補償適応である。この状態はウミスズメ目でもコウミスズメ,エトピリカなど飛翔性の高いものにも平行してみられる傾向である。胸筋ではモグリウミツバメは大胸筋深部をもち(退化しているが),これは他のミズナギドリ目に共通な滑空飛行への適応を保有していることを示す。前胃に多量の食物を貯えるのもモグリウミツバメにみられるミズナギドリ目の特徴で,常時潜水して少しつつ食物をとるウミスズメ目の細い前胃と異なる(この目でもコウミスズメなど飛翔性の高いもので小さい〓のうをみる)。さらに腸の回転型も,恐らく食習性の違いに適応して異なっている。なお,モグリウミツバメはミズナギドリ目特有の体嗅より強い「カモ嗅」を含む嗅いをもつ。

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