山階鳥類研究所研究報告
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仙台市におけるコムクドリとムクドリの繁殖種間関係
小笠原 〓
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1976 年 8 巻 1 号 p. 27-37_2

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抄録
1.1961年,1963年,ムクドリ(Sturnus cineraceus)と関連したコムクドリ(Sturnia philippensis)の一般的繁殖行動及び営巣場所選定の機能を明らかにする目的で,両種の繁殖期の観察を仙台市川内住宅内で行った。
2.ムクドリはこの繁殖場所に,夏鳥であるコムクドリより約1週間早く,4月上旬には到着する。
3.ムクドリは主に川内住宅付近のスギ(Cryptomeria japonica)の樹洞で繁殖する。1961年には住宅の屋根瓦の下に3つがい,1963年には4つがいが,それぞれ営巣繁殖した。
一方,コムクドリは全て住宅の屋根瓦の下の穴に営巣し,1961年には15つがい,1963年には25つがいが,それぞれ営巣繁殖した。その他,両種とも川内住宅以外の地域でも繁殖していた。
前営巣期には両種の営巣場所をめぐる種内•種間闘争が観察された。
ムクドリが営巣中のコムクドリの巣を奪った2例が観察され,このようなことから,ムクドリはコムクドリより優位であると考えられる。
4.コムクドリでは,営巣する以前に,一時的に占有する屋根瓦の下の巣穴が,広く分布しているのに比べ,営巣繁殖した巣の分布は,数住宅の屋根に集中しているのが認められた。
5.ムクドリでは,前営巣期においてスギの樹洞をめぐる闘争がみられ,この樹洞に営巣できなかったつがいが,コムクドリの営巣場所である住宅の屋根に侵入する。その結果,コムクドリとの闘争がしばしばみられた。
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