1986 年 34 巻 3 号 p. 189-191
化学者と芸術, が与えられた題である。考えれば考えるほど, むずかしい。化学者一般と芸術家一般との関係を論じるなど, とても私の手に負えそうもない。そこで, 私自身をサカナに, 問題を考えてみることにした。自分が平均的化学者だというつもりは毛頭ない。最低も最低のズッコケ化学者であることは, 誰よりも私自身がよく知っている。しかしこの窮余の策も, 考えてみれば, メリットがなくはない。なぜならば, 自分がいちばんよく知っている化学者について書くことになるからである。