化学教育
Online ISSN : 2432-6542
水のすがた
関 集三
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1986 年 34 巻 4 号 p. 273-278

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抄録

「通俗性は侮蔑(ぶべつ)をもたらす」の諺(ことわざ)があるが, 水は私ども身の回りにあまねく存在し, 極めてありふれた物質であるため, 今世紀になってからも, 第一線の化学者の研究意欲をそそらなかった。しかし今より約50年前から次第に注目され始め, 各種の研究手段の発展と相俟(あいま)って, 現代的テーマになっている。今日宇宙には10^<26>個も天体があるといわれるが, 液体の水で覆われていることが知られているのは地球だけである。しかも水の性質は研究が進めば進むほど, 異常性が明らかになってきた。このように水はこの宇宙で「稀有(けう)」な「異常」な存在であるとともに, 多くの異常な性質をもった物質であることがわかり, しかも「その中からのみ」生物が発生したことからも, 人間の生命のゆりかごの役割を果たしつづけている。この重要な物質の異常な姿にふれてみたい。

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© 1986 公益社団法人日本化学会
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