化学と生物
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加水分解コムギの経皮感作によるアレルギー
酒井 信夫中村 里香中村 亮介安達 玲子手島 玲子
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2014 年 52 巻 7 号 p. 431-437

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抄録

近年わが国では,加水分解コムギ(HWP:Hydrolyzed Wheat Protein)を含有する洗顔石鹸の長期使用により経皮・経粘膜的に感作され,コムギ製品の経口摂取により食物アレルギーを誘発する事例が数多く報告され,社会的に大きな問題となっている.第59回日本アレルギー学会秋季学術大会(2009年10月)において,特定の洗顔石鹸に含まれるHWP「グルパール19S(Glp19S)」による即時型コムギアレルギーの事例が,国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師らによって報告されて以来,患者数として通算2,163名の確実事例(2014年4月20日現在)が報告されている(参考:茶のしずく石鹸等による小麦アレルギー情報サイト).現在,日本アレルギー学会の「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を中心としてHWPによるアレルギーの情報収集と分析,原因の解明研究,予後の調査が行われている.HWPアレルギーの臨床症状・病態に関する総説および解説などは委員会メンバーから報告されており,詳細は他稿に譲る.本稿では,国立医薬品食品衛生研究所において継続的に行われているHWPの抗原解析および安全性評価に関する研究として,①グルテンの加水分解によるネオエピトープの形成,②HWPを含まないコムギ製品の経口摂取によるアレルギー発症原因,③マウスを用いた経皮感作モデル実験系の構築,④HWPのプロファイル分析について,HWPが提示する感作性・惹起能について双方向の観点から概説する.

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© 2014 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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