化学と生物
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 次世代の植物保護技術の開発を目指して
    甲斐 建次
    2023 年 61 巻 4 号 p. 163-171
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    青枯病菌はナス科を中心とした250以上の植物種に感染し,青枯病を引き起こすグラム陰性の植物病原細菌である.これまでに,本病の有効な化学防除法は確立していない.近年,青枯病菌は土壌真菌類にも寄生することが報告された.この真菌寄生は,宿主植物が育っていなくても,青枯病菌が圃場に潜伏し続ける原因の1つである可能性がある.植物と真菌のいずれに感染する場合も,青枯病菌はクオラムセンシング(QS)という同種細胞間の化学コミュニケーションを利用する.本解説では,QS阻害によるトマト青枯病菌の予防・治療に向けた筆者らの取り組みを紹介する.

  • 国内産水稲からのタンパク質供給による持続的な稲作の可能性
    渡辺 昌規
    2023 年 61 巻 4 号 p. 172-178
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    現在,世界的な人口爆発,畜肉生産による環境への負荷,食糧安全保障の観点から,自国自給可能であり,食糧と競合しない非可食部由来の植物性タンパク質,リン供給が課題となっている.特に,本国のような輸入依存度の高い国では,より深刻な状況にある.本研究では,国内自給が可能なタンパク質含有未利用バイオマスである米糠(脱脂米糠)に着目し,同バイオマスからのタンパク質・リン成分の2成分同時回収・精製を可能にする環境調和型プロセスであるIP-EWT(等電点沈殿・電解水処理)法の開発及び本法により得られた“アレルゲン・GMOフリー米糠由来タンパク質”の代替肉への適用可能性について取り組んでいる.本技術の確立・事業化により,従来の白米を生産する稲作から,白米+タンパク質+リン成分の生産を可能にする収益性の高い稲作へのパラダイムシフトと持続的農業(稲作)の振興が期待される.

  • 研究者目線で語るオルガノイド研究
    松井 伸祐, 坂口 恒介, 岩槻 健
    2023 年 61 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    内胚葉の三次元幹細胞培養系であるオルガノイド培養系が開発され,これまで不可能であった消化管,肝臓,膵臓,味蕾細胞の培養が可能となった.このことで,消化器機能の基礎的理解が一気に進むと同時に,オルガノイドを使った応用研究にも注目が集まっている.本稿では,オルガノイド研究の歴史から現段階での課題とその解決法について論じる.また,オルガノイドが今後どのような分野での活用が期待されているかを,オルガノイド研究に従事している研究者たちの目線で紹介したい.

  • KEAP1-NRF2制御系によるミトコンドリアエネルギー代謝への寄与
    草野 佑典, 村上 昌平, 本橋 ほづみ
    2023 年 61 巻 4 号 p. 188-195
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    太古の地球において,光合成を行うシアノバクテリアの大量増殖により大気中の酸素濃度が上昇し,その結果として酸素呼吸を行う真核生物が生まれた.酸素呼吸は,分子状酸素を利用することにより,高効率なエネルギー産生を可能としたが,同時に,生体分子の酸化障害,すなわち酸化ストレスが生じるという問題を含んでいた.ゆえに,好気的代謝を行う生物にとって,酸素に由来する酸化ストレス障害に対する生体防御機構は不可欠であり,その生体防御機構の破綻は生体に重篤な障害をもたらす.KEAP1 (Kelch-like ECH (erythroid cell-derived protein with CNC homology)-associated protein 1)-NRF2 (nuclear factor erythroid 2-related factor 2) 制御系は酸化ストレスに対する生体防御機構として発見され,酸化ストレス応答の要となっている.しかしながら,KEAP1-NRF2制御系は酸化ストレス制御以外にも,細胞の分化・増殖制御,炎症応答,抗老化など様々な生理学的プロセスにも貢献していることが報告されている.特に近年,生体のエネルギー代謝という観点からミトコンドリア機能の活性化効果が報告されており,ミトコンドリア機能障害に起因する疾患の治療薬開発に向けた標的としても注目されつつある.一方,ミトコンドリア機能制御という観点では,硫黄代謝,特にシステインの代謝がミトコンドリアでのエネルギー産生において,重要な役割を担っていることが示唆されている.興味深いことに,KEAP1-NRF2制御系は,細胞のシステインの取り込みと代謝を制御していることも明らかにされており,硫黄代謝を介してミトコンドリアのエネルギー代謝に関与していることが予想されている.そこで本稿では,KEAP1-NRF2制御系に依存したミトコンドリア機能制御について概説し,さらにミトコンドリアエネルギー代謝におけるKEAP1-NRF2制御系を介した硫黄代謝の重要性について考察する.

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