一般に,微生物が作る胞子はさまざまなストレスに耐性をもつ休眠細胞であると考えられている.希少放線菌の中には休眠細胞として胞子嚢胞子を形成するものが知られているが,最近,胞子嚢胞子の休眠と覚醒の制御メカニズムの一端が明らかにされた(1).胞子嚢開裂が起こらない変異株の解析から,胞子嚢胞子の酸化ストレス耐性獲得に関わる新しいタイプのシグマ・アンチシグマ系が発見された(1).さらに,胞子嚢開裂の開始を抑制する分子機構の存在が明らかにされ,希少放線菌の胞子嚢胞子では休眠状態を維持するために一部の遺伝子が発現し続けていることが示唆された(1).本稿では,これらの制御システムについて解説する.

2024年3月に筆者は,農芸化学女性研究者賞を光栄にも頂戴し,本稿を執筆させていただく運びとなった.今回の受賞の背景には,筆者が2017年3月に「第1回農芸化学若手女性研究者賞」を頂戴した際,当時日本農芸化学会会長でいらっしゃった植田和光先生より,「今度は農芸化学女性研究者賞を受賞できるよう,これからも研究に励んでください」とのお言葉を頂いたことがある.このお言葉のお陰で気合が入り,若手女性研究者賞の受賞後に筆者は,新たな研究テーマを立案して注力してきた.本稿では,新たに立案した研究テーマである「海藻を原料としたバイオプラスチックの微生物合成」と「生分解性プラスチックの微生物酵素による新たな生分解メカニズムの解明」について,周辺事情をご紹介しつつ話題を提供する.

今回の「トップランナーに聞く」は日本農薬株式会社上席執行役員・研究本部長の西松哲義先生にインタビューをお願いしました.西松先生は1983年に東京農工大学農学部植物防疫学科を卒業されて,同年,日本農薬株式会社に入社されました.フェンピロキシメートやフルベンジアミドなどの様々な農薬研究開発のご経験を経て,2019年には総合研究所長に就任され,2022年から研究本部長を務めていらっしゃいます.アメリカ農務省研究所への海外留学において,国内では得られないフィールド活動や著名な先生との一期一会も経験され,2007年から現在までに,世界初となるフルベンジアミド剤などワールドワイドにトップヒット農薬を産みだされています.2016年からはマーケティングやマネジメントなど,農薬のスクリーニングから上市のプロセス,試験場での現場実地指導など,基礎から応用・実用までのすべてをカバーし,社内のプロセスをすべてこなされるオールマイティな役割を担って来られています.今回は,西松先生のご経験を中心に,生まれ故郷の徳之島に端を発し,現在の農薬業界をリードするに至るまでのお話を伺いました.
(取材日:2024年10月11日.所属・役職は当時のもの)
農薬が抱える諸問題を解決する方法として植物由来の農薬の開発が挙げられる.そこで我々は,本校の過去の研究より,ジャガイモ由来天然毒素成分ソラニンに着目した.ソラニン抽出液を作製し,昆虫忌避試験および環境影響に関する実験を行った.すると2種類の昆虫に対して行った忌避試験において効果がみられ,ソラニン抽出液に防虫効果があることが示唆された.また,環境影響に関する実験においては,市販の農薬よりソラニン抽出液の方が環境へ与える負荷が小さいことが示唆された.