化学と生物
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選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 走り続けるためにはどのように食べるのが良いのか
    石原 健吾
    2023 年 61 巻 10 号 p. 461-467
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    ウルトラマラソンなど超長時間競技に挑戦する人が増えている.栄養補給は競技スキルの一部であり,試行錯誤する選手が多い.完走を目指す一般選手が自分に合った補給を見つけるための生体計測デバイスの活用方法について紹介する.

  • 野生植物として生き抜いてきた山菜の化学戦略を利用する
    上杉 祥太
    2023 年 61 巻 10 号 p. 468-476
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    日常的に私たちの食卓に並ぶ野菜や果物は,含まれる成分と期待される機能性に関する知見が蓄積されている.一方,食される季節や地域が限定される山菜は,機能性に関する研究例が少ない.山菜は,特に中山間において食文化や地域産業に密接に関わる重要な資源である.またそれには留まらず,山菜は特異な二次代謝産物を豊富に産生し,高付加価値化や用途拡大に役立つ優れた機能性を持つ素材として近年注目されている.この特有の物質生産能は,野生植物として生き抜いてきた山菜の化学的な生存戦略と捉えることができる.本稿では,山菜が担う多面的な役割に触れながら,筆者らの成果を中心としたキク科山菜の新しい機能性を紹介する.

  • セルロース合成酵素類似タンパク質に秘められた意外な機能
    關 光, CHUNG Soo Yeon, 村中 俊哉
    2023 年 61 巻 10 号 p. 477-483
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    トリテルペン配糖体(サポニン)は,疎水性のトリテルペノイド炭素骨格に親水性の糖鎖が結合した化合物群であり,多くの生薬の主有効成分であるほか,大豆に含まれるソヤサポニンは健康機能性や味に影響する成分として知られる.多くの研究により,サポニン生合成における糖転移反応は一般にUDP糖依存型糖転移酵素(UGT)と呼ばれる酵素ファミリーが触媒するとされてきた.一方,筆者らは,サポニン生合成において未同定だった糖転移酵素の一つが,UGTとは全く異なるセルロース合成酵素様タンパク質であることを発見した.本稿では,新規糖転移酵素発見の経緯と本酵素を用いた甘味サポニンの酵母生産の取り組みについて解説する.

  • 生合成阻害剤を利用したアプローチ
    添野 和雄, 佐藤 明子, 嶋田 幸久
    2023 年 61 巻 10 号 p. 484-492
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    オーキシンは最初に見いだされた植物ホルモンであり,植物において重要な信号伝達物質の一つとされている.細胞分裂と細胞伸長による胚発生,発根促進,頂芽優勢,光・重力屈性など植物の生長・分化をあらゆる場面で制御する.主要な天然オーキシンであるインドール-3-酢酸(IAA)は単純な構造でありながら様々な生理作用を示すことから(1),オーキシンのアナログ(構造や生理作用など分子生物学的な性質が類似した化合物)は除草剤,着果促進剤,摘果剤など様々な用途で植物成長調節剤や農薬として農業分野において利用されてきた(2).近年ではオーキシンの代謝や輸送,情報伝達に作用する阻害剤などの低分子化合物もケミカルツールとして数多く報告されており(3, 4),ケミカルツールを利用したケミカルバイオロジー研究は遺伝学的な手法を補完することでオーキシンの機能解明などの研究に役立てられている.本稿では,これらのケミカルツールのうちでも標的が明確で,かつ標的に対する特異性に優れたオーキシン生合成阻害剤の開発とそれらを利用した研究成果について解説する.

  • 薬剤耐性菌に対抗する新規抗菌薬の創成を目指して
    目黒 康洋, 田口 優佳, 桑原 重文
    2023 年 61 巻 10 号 p. 493-500
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    医薬品の開発は1)標的タンパク質の同定,2)薬剤候補物質の探索・選抜,3)臨床試験を経て行われることが多い.最近では,薬剤候補化合物となり得る天然有機化合物を生産する微生物は,天然から取り尽くされたとも言われているが,実際のところ微生物の種類は正確に把握できていない.そのため,未発見の微生物を含む天然に存在する微生物群は,今後も医薬品化合物の宝庫となり続ける可能性はある.微生物が生産する天然有機化合物の全合成研究は医薬品化合物の供給,天然有機化合物の構造決定,生合成経路の解明や新規有機化学反応の発見に大きく貢献しており,産業および学術の両面において重要な役割を果たしている.

  • 青色光照射による蚊駆除の可能性
    堀 雅敏
    2023 年 61 巻 10 号 p. 501-509
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    環境負荷や安全性,殺虫剤に対する害虫の抵抗性発達などの問題から,殺虫剤に代わる新たな害虫防除技術が求められている.そのような中,クリーンな技術である光による害虫防除(光防除)は,LEDの発展と普及により近年注目されている.従来の光防除は誘引や活動抑制など,光による害虫の行動制御を利用したものが主であったが,筆者は可視光である青色光に殺虫効果があることを発見した.一方,殺虫に効果的な青色光波長や有効強度は昆虫種や発育段階で異なることも明らかにしている.そこで,本稿では感染症媒介で問題となる蚊の発生抑制対策への青色光利用の可能性について,代表的な蚊類に対する青色光の殺虫効果を示しながら解説する.

プロダクト イノベーション
農芸化学@High School
  • 増尾 諒一
    2023 年 61 巻 10 号 p. 516-519
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    雑草であるシロツメクサ(Trifolium repens)が,農作物であるトウモロコシ(Zea mays)に与える発芽・発育作用を検証することで,雑草が農作物に与える影響について評価した.シロツメクサは繁殖力が大きいことからトウモロコシの発芽・生長を大いに阻害するとの仮説を立てた.しかし,屋内外でシロツメクサの有無によるトウモロコシの生長の差異を比較する実験を行ったところ,発芽率・茎の太さに大きな違いはみられず,草丈には生長促進,乾燥重量や種子数には生長阻害がみられた.今回の実験結果をベースとし,実験方法に改善を重ねることで,農薬等を用いない持続可能な農業への応用が期待できる.

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