2018 年 56 巻 12 号 p. 797-803
世界各地で発生する乾燥,高温,塩などの環境ストレスにより,農業被害は年々深刻化している.筆者らは,近年発展するエピジェネティック制御の理解は,しなやかな遺伝子発現制御を可能とし,これまでの手法とは異なる環境ストレス強化法の発見につながると考え,エピジェネティック制御のうち,ヒストンのアセチル化修飾に着目して研究を進めた.そして,ヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase; HDAC)の活性を遺伝学的・薬理学的に操作することで,植物の環境ストレス耐性を高めることに成功している.本稿では,植物の環境ストレス応答にかかわるHDACについて,シロイヌナズナで得られている知見を紹介する.