抄録
歴史的思考力を育む世界史学習を実現するためには、その前提として生徒および授業担当者の学習観を転換させる必要がある。現行の学習指導要領においても「主体的・対話的で深い学び」が目標として掲げられ、探究的な世界史学習に関する実践研究は積み重ねられてきているが、知識習得中心の学びから思考力中心の学びへの転換には課題がみられる。本稿の目的は、このような日本の世界史教育の文脈において学びの転換を図るためには国際バカロレア(IB)の教育システムも依拠している構成主義の学習理論が有効であるという主張の妥当性を検証することである。研究方法は、高等学校と大学における筆者自身の授業実践の分析と、履修者に対するアンケートの分析による。研究の結果、構成主義にもとづく指導・学習アプローチが有効であることについては確認できた。しかし、学習者(生徒・学生・教員)が構成主義的な学習観に転換するにあたって、知識の捉え方に関して大きな課題があるということが浮かび上がってきた。今後の課題は、現職の高校教員に対する調査をふまえて、探究的な世界史学習を実現するための要件を探っていくことである。