2011年東北地方太平洋沖地震津波による甚大な被害を受け,ハードとソフトを組み合わせた減災機能の高い地域づくりの重要性が提唱されている.設計天端高を超える規模の津波に対し,海岸堤防には損壊を最小限にとどめ,可能な限り氾濫流を減衰させる粘り強い機能が求められており,越流を伴う津波に対する減災効果の定量的評価が極めて重要となる.本研究では,2011年津波による宮城県仙南地域と福島県勿来地域における被災事例を対象とし,調査結果および数値氾濫解析を通じて海岸堤防による減災機能の定量的評価を試みた.その結果,減災効果は津波に対する堤防の相対高さや周辺地形に依存し,条件によってはその効果が著しく低下すること,堤防高が不均一であると背後域の減災レベルが低下する危険があることなどの有用な示唆が得られた.