2014 年 70 巻 1 号 p. 79-96
海洋上を進行する微気圧変動の伝搬速度が海洋長波の波速に近づくと,大気・海洋間の共振を引き起こし,発達した海洋長周期波がさらに沿岸地形の固有周期と共振して大きな副振動災害を発生させる.こうした気象擾乱を起因とする長周期波災害は,九州西岸では「あびき」と呼ばれてきたが,最近同様な災害事例が北海・地中海等に面する国から報告され,「気象津波」の呼称が定着しつつある.本研究は,鹿児島県上甑島の浦内湾における気象津波の解明を行うために,2次にわたって実施した現地観測と,中国本土から東シナ海全域の大気場の数値解析および沖合から沿岸部に至る海洋場の数値解析,の3つの結果をとりまとめたもので,気圧擾乱の発生・発達から外洋の長周期波の発達,沿岸域に到達後の湾水振動に至る一連のメカニズムを検討したものである.