2015 年 71 巻 1 号 p. 69-77
本研究では電気伝導度にもとづいた海水の塩分に及ぼす懸濁物質の影響を定量的に明らかにするために,現地観測および室内実験を行った.塩分は懸濁物質濃度の上昇およびセンサーの底泥内への貫入にともなって低下した.室内実験の結果,懸濁物質濃度に対して見かけの塩分は線形的に低下し,塩分低下率はろ過海水の塩分が高いほど増加することが明らかになった.モンモリロナイトとカオリナイトを用いた実験の結果,塩分センサー内の海水体積の減少および粘土粒子による吸着が原因であることが示唆された.室内実験で明らかになった懸濁物による塩分低下特性と多項目水質計の塩分から海底付近の懸濁物質濃度の鉛直分布を推定した結果,海底上約2cm厚内で15,000mg/LのFluid mudが形成されていることが明らかになった.