2016 年 72 巻 2 号 p. I_1027-I_1032
原子力発電所の防潮堤の設計に際しては,防潮堤位置での最大通過波高から求まる設計用浸水深の3倍(以下,「水深係数3」という)に相当する静水圧から設計波圧が求められることが多い.本論では,防潮堤に作用する波圧を段波波圧及び持続波圧に分類し,その段波波圧の作用を受ける直立壁の構造的な応答に着目して水深係数3の適用性を確認した.その結果,段波が防潮堤の構造健全性に与える影響は,概して持続波による影響よりも小さいこと,段波による影響は津波の砕波と密接に関係しており複数の条件の重畳によっては持続波による影響よりも大きくなる場合があること,その場合でも国交省の暫定指針の考え方が適用できること,及び数値計算により段波波圧の影響を受ける堤体の構造応答挙動が評価可能であることを確認した.