2016 年 72 巻 2 号 p. I_1501-I_1506
水平解像度20kmのMRI-AGCM3.2SによるSSTアンサンブル実験結果から海面温度,気温,気圧の将来変化量を見積り,JRA-55に将来変化量を上乗せすることで擬似温暖化環境を作成し,JRA-55と擬似温暖化環境を初期・境界値として伊勢湾台風を対象とした力学的ダウンスケーリングを行い台風と高潮の将来変化について検討した.その結果,海面温度を考慮するだけでは過度に強い台風(中心気圧で約40hPaの低下)を推定し,気温,気圧を考慮することで台風の中心気圧が現在気候に比べて約10hPa小さくなること,台風経路が西へシフトすることを確認した.ダウンスケーリング結果から台風情報を抽出して経験的台風モデルによる高潮計算を行った結果,将来気候下では平均して約26cmの高潮偏差の上昇が推定された.