2018 年 74 巻 2 号 p. I_1219-I_1224
沿岸域の生物多様性再生に適したシースケープの特徴を調べるため,浮遊幼生期に受動的に移動する底生生物を扱い,1次元仮想空間で多世代に渡る数値計算を行い,無撹乱条件下の底生生物群集の多様性および持続性,あるいは,撹乱条件下の特定の生物(カニ類)個体群の持続性を高める生息場の空間配置の特徴を定性的に明らかにした.総延長が一定の生息場を配置し,底生生物群集の多様性および持続性を高めるには,生息場の個数を少なく,各生息場の延長を長くする事が効果的と考えられた.また,生息場外からの浮遊幼生の加入と,生息場内の多様な生物の持続的な生息の間には,生息場の個数および面積に対してトレードオフの関係があった.強い撹乱条件下では,生息場を適度な個数に分割し適度に離して配置すると,カニ類の持続性は高まると考えられた.