2020 年 76 巻 1 号 p. 7-19
高波と高潮が同時生起する際には,波の打上げによる越波から,越波・越流が重畳する遷移状態を経て越流へと,流体場の特性が大きく変化するが,推定モデルや評価手法が確立されておらず,工学的知見の蓄積も不十分である.本研究では,フルスケールで実施された越波・越流遷移実験を基にして,波浪の影響や浸水流量の時間変化を適切に再現可能な,越波・越流遷移モデルを開発する.このモデルを活用して,典型的条件下における越波・越流遷移過程の計算を行い,打上げ高と浸水流量の時系列変化の特徴を例示する.また,高波・高潮結合シミュレーションモデルに越波・越流遷移モデルを実装し,単純な海底地形や台風条件のもとでの浸水シミュレーションを行って,越波・越流遷移過程を考慮することの重要性と構築された数値モデルの有用性を示す.