2021 年 77 巻 2 号 p. I_337-I_342
遡上域の地形変化をより詳細に理解するためには,汀線付近の波の挙動と地形変化メカニズムの解明が必要である.本研究は,静岡県駿河海岸に設置した複数台の超音波式波高計および容量式波高計と遠赤外線カメラを用いた現地連続観測から令和元年東日本台風時の波と堤防前面における地形変化の関係を議論したものである.本観測期間中,堤防まで到達した波は60波であり,この波によって観測地点において約20〜50cmの砂面低下が生じた.遠赤外線カメラによって撮影した遡上波の区間平均流速より,down-rush時の流速は波高規模に寄らず一定であることが確認された.また,砂面低下の過程はその進行速度から4段階に区分でき,そのうち砂面低下が急激に進む時間帯では区間平均流速の3乗値との間に相関関係が確認された.