2021 年 77 巻 2 号 p. I_661-I_666
海岸地形の形成には河川からの土砂供給(流砂系)と沿岸域における土砂移動プロセス(漂砂系)の連関が強く影響を及ぼしている.その長期的変化を予測し,海岸保全を行うためには,流砂-漂砂系土砂収支を把握することが必要となるが,その実態については未だ定量的な議論には至っていない.
本研究では,信濃川の洪水放流路(大河津分水路)の河口部に位置する寺泊野積海岸において,土砂収支の実態を明かにすることを目的とする.その結果,沿岸域に堆積した漂砂系総土砂量は1億6,000万m3に及び,中小河川から供給された土砂量は8,400万m3と推算された.これにより,大河津分水路から流出し,供給された土砂量はおよそ7,600万m3と推算でき,年間供給量に換算すると79万m3/年となる.これは,国土交通省による報告値(70~80万m3/年)と整合しており,広域かつ長期的な地形変化にもとづく土砂収支解析の妥当性が示された.