2021 年 77 巻 2 号 p. I_871-I_876
近年,台風等による大雨に起因する出水により養殖場における海水塩分が著しく低下し,水産生物の斃死が発生している.本研究では,北海道火散布沼のウニ養殖場を実験対象に,四胴型自動航行船を使用して塩分場を広範囲に自動計測し,強い降雨による低塩分水の形成過程を明らかにした.塩分場の観測結果から,降雨ピークに伴い低塩分水が沼奥に出現後,解消されずに存在することが明らかになった.低塩分水の出現後,沼奥の塩分は降雨ピークイベントに応答して段階的に低下した.沼内では潮流が卓越し,その残差成分はエスチャリー循環であるため,降雨後は徐々に高塩化した.ただし,降雨ピーク時には集水域からの淡水供給により,沼内の塩分低下に相当する洪水流出が残差成分として卓越した.