2022 年 78 巻 2 号 p. I_397-I_402
台風による高波の外洋での観測はこれまで非常に限られていた.本研究では2021年の夏季台風シーズンを対象として,最新の小型GPS波浪ブイの複数台の展開および波浪観測衛星データの活用により,ほとんど行われてこなかった外洋でのスペクトル情報を含む台風高波観測を実施した.外洋で10mを超える有義波高の台風高波を複数地点で観測できており,台風高波の物理過程の理解にとって非常に有用なデータとなる.観測値と波浪モデル推算値を比較した結果,推算値では高波浪の再現精度が悪く,波高および周期を過少評価,周波数分散を過大評価することがわかった.また,推算値はブイより衛星観測値との相関が高く,ブイで捉えられるような局所的な波浪変動を表現するには課題があることがわかった.