2022 年 78 巻 2 号 p. I_637-I_642
海氷接触による鋼材表面のさび層(腐食生成物,皮膜)の剥離や除去の有無を模擬した簡易な水槽実験やさび層形成時の腐食進行モデルを考案した.実験からさび除去の頻度が大きい程腐食が進むこと,さびの放置期間が同じなら,試験体の過去のさび除去の頻度・履歴に無関係に,その期間内の腐食量に大きな差はないこと等が推察された.さび形成時の酸素拡散律速に基づく腐食モデルから,腐食量は時間の平方根に比例(腐食速度が減少)する事が予想され,実験値の傾向を説明した.また本モデルでは,連続さび除去時の腐食速度となる時刻ゼロの接線勾配が存在し,その勾配をもつ直線もさび除去の頻度が高い実験傾向に合致し,モデルの妥当性を示した.さらに,その腐食モデルに基づく流氷接触頻度に応じた腐食量増大プロセスを概念的に示すとともに,実務への展開についても考察を加えた.