2022 年 78 巻 2 号 p. I_841-I_846
沿岸河口域の貧酸素化は,沿岸生態系に悪影響をおよぼす水環境問題であり,地球温暖化によって悪化すると予測されている.本研究では,貧酸素水塊が発生している内湾として大阪湾を対象に,溶存酸素に関する数値シミュレーションおよび収支解析を実施し,貧酸素化要因の解析を行った.また,瀬戸内海全域を対象とした既往予測結果を活用して,大阪湾の貧酸素水塊への気候変動影響に関する数値実験を実施し,貧酸素水塊動態の変化について検証した.その結果,温暖化に伴う水温上昇は,大阪湾東部の中層域において分解される有機物量を増加させ,貧酸素水塊の発生を早期化させる可能性が示された.また,夏季後半においては,一次生産量の減少に伴い,現在よりも貧酸素水塊が早く縮小することがわかった.