抄録
著しく過密化が進み,本数調整伐による改良が困難になったクロマツ海岸防災林は伐採,更新を図る必要があるが,
帯状更新を行う際の適切な更新帯の下限幅を検討した例はない.そこで,光条件とクロマツ植栽木の成長の関係と,林縁からの距離によって光環境がどのように変化するかを調査した. 6年生の植栽木の幹材積と光条件を調査したところ,クロマツの更新に必要な光条件の目安は開放地の光環境の60%と推測された.また,林縁木の樹高Hを基準とした林縁からの距離と相対光量子量の関係を調べると,北側の林縁部においては林縁から更新帯の中央に向かって1/4Hの距離まで,北側以外の林縁においては1/2Hの距離まで相対光量子量が60%に達しなかった.防災林を帯状に伐採して更新する際には,両側の残存林帯の林縁木から被陰を受けることになるため,陽光不足によってクロマツが健全に生育できない影響範囲は2倍となる.よって更新帯の幅が林縁木の樹高よりも狭い場合は更新帯全面が陽光不足になる恐れがある.このように帯状更新を行う際には,必要な防災林の幅と被陰の影響を受ける範用を想定して更新福を決定する必要がある.