会計検査研究
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会計検査研究
地方消費税の配分と清算基準のあり方について ―平成30 年度改正の評価と影響試算―
中里 透
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2018 年 57 巻 p. 53-77

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抄録

 本稿では地方消費税の配分のあり方をめぐる議論について論点整理を行うとともに,清算基準の見直しが各都道府県の税収に与える影響について最新のデータをもとに試算を行い,2018年度から適用される新たな清算基準(平成30年度改正)の評価を試みる。

 最終消費地への税収の適正な帰属を確保するという観点からは,需要側から消費額をとらえる統計を清算基準として利用することを基本とすることが望まれるが,現時点で利用可能な需要側の統計(全国消費実態調査)には,サンプル調査であることやデータの表章が世帯当たりの平均値の形となっていることなどの制約があり,この点を考慮すると当面は全数調査で都道府県単位のデータがそのまま利用できる供給側の統計(商業統計調査・経済センサス活動調査)を清算基準として利用することが適切と考えられる。

 各都道府県の消費額の代替指標として人口を利用することについては,1 人当たり消費額に都道府県間で無視し得ない差異があることに留意が必要であり,人口は清算基準全体の中ではあくまで補助的な役割のものと位置づけることが妥当と判断される。

 2018年度からの適用が予定されている新たな清算基準をもとに,今回の改定が各都道府県の税収に与える影響について試算すると,東京都の税収が1,000 億円程度減少する一方,埼玉県の税収が200 億円超増加するなど各都道府県の税収に大きな変化が生じることが確認される。もっとも,各都道府県の最終消費地ベースの消費額と対比する形で規準化すると,東京都に隣接し通勤・通学などによる日常的な県間移動の多い埼玉県・千葉県・神奈川県の税収は,他地域と比べ依然として低位にとどまる。この点を踏まえると,今回の見直しは最終消費地への税収の適正な帰属を確保するという形式をとりつつも,実際には大都市圏と地方圏の間の税収格差の是正を強く意識したものとなっていることが示唆される。

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© 2018 本論文著者
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