会計史学会年報
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伊勢商人・長谷川治郎兵衛家の帳合法の発達過程
橋本 寿哉
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2018 年 2018 巻 37 号 p. 1-14

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抄録
江戸時代には、商家ごとに独自の帳合法が形成されていたが、一部の大商家の帳合法は複式決算構造であったことが知られている。これは西洋起源の複式簿記と同一の原理に基づいたものであったが、日本で独自に生成した固有のものであったと考えられる。本稿では、こうした帳合法がいかにして生成・発達したかを明らかにするための一助として、17世紀後半に江戸に進出して木綿問屋として発展を遂げた伊勢商人・長谷川治郎兵衛家を事例として採り上げ、同家における帳合法が、最終的に複式決算構造の極めて体系的なものとして完成されるまでの発達過程を、経営上の時代区分に基づいて考察した。同家の帳合法は、組織体制の発展に対応して段階的な発達を見せ、最終的に、一族の事業、家産、家計が本家によって一元的に統括される中央集権的な持株会社形態の体制へと発展・進化したことが、体系的な帳合法を完成させることになった。以上より、江戸時代の商家の組織体制の発展・進化が、日本固有の体系的な帳合法を生成・発達させた重要な要因の一つであったと考えられる。
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© 2018 日本会計史学会
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